僕はその場で空を仰いだ。
あぁ、なんということだろう。僕はすべてを失った。
それまで軋んでいた心さえも、もはや彼方へとすぎさり、今はもう意味をなさない。
あなたは言った。なぜ、やってみないのか?やってはいけないことなのか?と。
あぁ、そんなことはない。
誰もやっていけないとは、誰も言ってはいないのだ。
だが、定められた箱の中で生まれ育ってきたものが、どうして箱には外があったなどと思うことができただろうか。
僕は盲いた老人のように、いや、それさえも僕の偏見かもしれないが、箱にはドアも窓もあったのだと気づくことさえできなかったのだ。
あぁ、そんなことはない。
僕は偽っている。僕はいつだって知っていた。すぐそこに窓があることを、ドアがあることを知っていた。
四角く切り取られた景色が時につれ様々な色あいに染まり、一歩を踏み出せば、その景色をつかみ取れるかもしれないことを知っていた。
ただ知っていた。
だけど僕はみないふりをした。
この胸の焦燥を空虚に変えて、みたものを信じようと努力することもなかった。
諦め、という罪。
僕はその罪が罪であることを知りながら目をつむり、そうしてより小さい新たな箱を作り上げ、そうして世界の狭さを嘆いた。
だが本当は、その罪が罪であるということを誰かに知られ、知らされることを恐れていた。
あなたはその罪を乱暴なまでに暴いた。
僕はその罪によって糾弾され、追い詰められることを恐れていたが、あなたは全く違う方向からその罪に触れてきた。まるで最初から罪など存在していないのだと告げているように。
あなたの言葉は僕の小さな箱を崩壊させた。
僕が僕自身で箱を閉じているという事実。それをもっとも単純で美しく、そして残酷につきつけたのだ。
あぁ、なんということだろう。
もう知らないふりをしていた僕には戻れない。作り上げた箱は居心地よく僕を包んでいたが、その箱がもはや意味をなさないのだと気づいてしまった今、僕にできることはただ前を向いて歩くことだけなのだろう。
僕は一生あなたのことを忘れない。あなたがどう思おうと、あなたの言葉で僕は崩壊し、そして構築されたのだ。
あぁ、なんということだろう。僕はすべてを失った。
僕を優しく包んできた小さな箱は、もうない。あるのはぐるりと見渡せる広大な大地だけ。そこに立つ僕だけだ。
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